次の日、目が覚めると僕はパジャマで布団の中に居た…どうやら着替えさせてくれたらしい。
いつもの朝のような感覚で体を起こそうとすると全身が痛んで、昨日あったことを思い出す。
途端に憂鬱な気持ちになり、冠葉の姿を探すも既に家には居ないようだった。
一瞬だけ安心した後、今度は言いようのない不安に駆られる。
家族ごっこは終わりだ
冠葉は昨日そう言ったのだ。
その言葉が本当なら、冠葉はもうこの家に帰ってこないんじゃないか。
少なくとも、陽毬が居ない間は帰らない気がして気が焦る。
「行かなきゃ…」
呟いた声はガラガラだった。
そういえば熱っぽい感じがする。
昨日雨に濡れたのが悪かったのかも知れない。
それでも体を起こすと携帯を鞄から携帯を取り出した。
画面に表示されたのはあの人からの着信履歴。
何度か電話をしてくれたようだが、最終的にはメールで心配する言葉を残して諦めたようだった。
流石にこの声では電話もしづらいので、謝罪のメールだけ送っておく。
冠葉には電話を掛けて見たものの、やっぱりというか想像通り繋がらなかった。
立ち上がると少し視界が揺れた。
何とか制服に着替えてから、今日が日曜だと気付いたが服を出すのも面倒でこのまま家を出ることにする。
「行ってきます」
誰も居ないシーンとした家は寂しくて、働かない頭で冠葉を取り戻すことだけを考えた。
しかし冠葉の行動範囲がいまいちわからない。
女の子の所にでも居たら、今日は見つけられないだろう。
学校周辺から探そうと駅に向かっていると、あの人から電話が掛かってきた。
少し悩んでから着信ボタンを押す。
「はい」
「もしもし、晶ちゃん…よかった、ようやく出たね」
「すみません…あの後、バタバタして携帯見れなくて」
「いや、いいんだ。それより、今から少し会えないかな?」
「今から…少しだけなら。あと今日は持ってきてないんで…」
「あぁ、それはいいよ。少し話がしたいだけだから」
待ち合わせ場所を決めて、すぐに移動を始める。
あの人と会うのにセーラー服を着ないのは久しぶりのことだった。
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